活動報告
2013年09月19日
大学経営実務講座第2回『大学の役割と現状-日本の再生に向けて-』セミナーレポート
大学経営実務講座は、日本の大学経営に関する課題を多岐にわたって取り上げ、実務に携わる皆様と意識の共有化を図ることを目的とし、隔月1回・東京丸の内にて継続的に開催しております。こちらでは、本講座をレポート形式にてご紹介します。
2013/9/12(火)に開催された第2回の大学経営実務講座では、日本銀行退職後、大学の教員へ転身した玉木伸介先生が、ご自身の二年半の教員経験から新卒採用手法と大学生・短大生の学業について講演を行いました。その後は参加者同士による意見交換が行われ、大変有意義な勉強会となりました。以下、トピックスを簡単にお伝えします。 第2回『大学の役割と現状-日本の再生に向 けて-』 講師:玉木 伸介 氏 今回のメインテーマ 今後の日本において理想的な新卒採用選考手法と、それを実現する企業側と教育側の連携はどうあるべき? 深刻な大学生・短大生の学力低下 前回のレポートでもお伝えしたように、18歳人口の減少・大学全入時代を迎え、現在の大学・大学生は大学進学率が10%前後であった高度経済成長期のそれとはかけ離れたものになっています。玉木先生が実際目にした大学性・短大生の学力低下の深刻さの現状とは、「パーセントが分からない」「文字を使って式を作れない」「新聞を読んでおらずニュースに疎い」「(話を咀嚼してマテリアルに変換するという意味で)ノートが取れない」等、悲惨なものでした。偏差値50前後の大学・短大では、多くの学生が推薦またはAO入試によって入学するため、受験経験が無く、知識を「締める」経験が乏しいということや、ゆとり教育の弊害により、絶対的な学習反復量が足りない等が主な理由であると分析しています。一方、学生のまじめさには驚くものがあり、授業の出席率の高さ、秩序よく並べてある校内の自転車、驚くほど清潔な食堂、教員への礼儀正しい挨拶など、学生たちは極めて素直で、高いコンプライアンス・マインドを持っています。 現在の就活で求められること 採用プロセスの量的膨張等により、高度経済成長期の想像を絶するほどの就職の困難化が進行しています。受験勉強すらしたことのない若者が猛烈な競争に突然晒されることとなるのです。現在の就活で求められるものは、SPIなどの筆記試験と自己PR/志望動機が中心の面接で、その対策本が多く出版されており、学生は20通り30通りの志望動機を事前に準備して面接に挑みます。いわば「上に政策あれば下に対策あり」という状態です。 学生の持つ潜在力 前述したように、大学生・短大生の学力低下は深刻ではありますが、「素材」は素晴らしいものを持っています。加えて、現在の大学・短大等の各種ファシリティは整備されており、「意識」さえ変えることができれば、「学業」は様変わりすることができます。その「意識」を変えるために、大学・短大でのキャリア教育に加えて、インターシップや新卒採用手法の変革等、企業による援護射撃が加われば状況は大きく変わっていくと思います。 教育側から企業側に望むこと 採用選考の仕方が学生の行動を決めるといっても過言ではなく、以下3つのポイントが企業側に望むこととして集約されます。
・欲しい人材をより具体的なスペックで提示してほしい。「TOEIC何点」の取っ掛かりやゼミの内容やそこで持った問題意識を、「専門は違うが知識人」である企業に説明する能力は問えないか。
・一般教養重視、というメッセージがほしい。一般教養を欠いた国際人は存在しえないし、学生は、「どういう資格が有利か」等と右往左往し、自身の勉強のベクトルが定まらない。例えば、こういうディベートを行うのでこの50冊の中の8冊は読んでおいてほしい等、明確なブレイクダウンを。
・志望動機や自己PRを重視しないでほしい。面接攻略本が浸透する中で、このような単調でストレートな質問を行えば、面接する側と気の合う人材ばかり採用してしまう傾向にある。企業側にとっても人材の多様性を確保することが難しくなるのではないか。
これらを具体的に実現していくには、教育側と企業側の意思疎通が必要であるとして、その可能性・方法について解説・議論を行いましたが、こちらのレポートでは割愛させて頂きます。
次回の大学経営実務講座は11/5(木)に開催予定、テーマは「東工大での人材育成チャレンジ:外部リソースを活用した研究者のマネジメント能力向上プログラム」になります。講師は株式会社カドタ・アンド・カンパニー代表取締役で元東京工業大学大学院 総合理工学研究科(博士課程)特任教授の門多丈さんです。皆様のご参加を是非ともお待ちしております!
2013/9/12(火)に開催された第2回の大学経営実務講座では、日本銀行退職後、大学の教員へ転身した玉木伸介先生が、ご自身の二年半の教員経験から新卒採用手法と大学生・短大生の学業について講演を行いました。その後は参加者同士による意見交換が行われ、大変有意義な勉強会となりました。以下、トピックスを簡単にお伝えします。 第2回『大学の役割と現状-日本の再生に向 けて-』 講師:玉木 伸介 氏 今回のメインテーマ 今後の日本において理想的な新卒採用選考手法と、それを実現する企業側と教育側の連携はどうあるべき? 深刻な大学生・短大生の学力低下 前回のレポートでもお伝えしたように、18歳人口の減少・大学全入時代を迎え、現在の大学・大学生は大学進学率が10%前後であった高度経済成長期のそれとはかけ離れたものになっています。玉木先生が実際目にした大学性・短大生の学力低下の深刻さの現状とは、「パーセントが分からない」「文字を使って式を作れない」「新聞を読んでおらずニュースに疎い」「(話を咀嚼してマテリアルに変換するという意味で)ノートが取れない」等、悲惨なものでした。偏差値50前後の大学・短大では、多くの学生が推薦またはAO入試によって入学するため、受験経験が無く、知識を「締める」経験が乏しいということや、ゆとり教育の弊害により、絶対的な学習反復量が足りない等が主な理由であると分析しています。一方、学生のまじめさには驚くものがあり、授業の出席率の高さ、秩序よく並べてある校内の自転車、驚くほど清潔な食堂、教員への礼儀正しい挨拶など、学生たちは極めて素直で、高いコンプライアンス・マインドを持っています。 現在の就活で求められること 採用プロセスの量的膨張等により、高度経済成長期の想像を絶するほどの就職の困難化が進行しています。受験勉強すらしたことのない若者が猛烈な競争に突然晒されることとなるのです。現在の就活で求められるものは、SPIなどの筆記試験と自己PR/志望動機が中心の面接で、その対策本が多く出版されており、学生は20通り30通りの志望動機を事前に準備して面接に挑みます。いわば「上に政策あれば下に対策あり」という状態です。 学生の持つ潜在力 前述したように、大学生・短大生の学力低下は深刻ではありますが、「素材」は素晴らしいものを持っています。加えて、現在の大学・短大等の各種ファシリティは整備されており、「意識」さえ変えることができれば、「学業」は様変わりすることができます。その「意識」を変えるために、大学・短大でのキャリア教育に加えて、インターシップや新卒採用手法の変革等、企業による援護射撃が加われば状況は大きく変わっていくと思います。 教育側から企業側に望むこと 採用選考の仕方が学生の行動を決めるといっても過言ではなく、以下3つのポイントが企業側に望むこととして集約されます。
・欲しい人材をより具体的なスペックで提示してほしい。「TOEIC何点」の取っ掛かりやゼミの内容やそこで持った問題意識を、「専門は違うが知識人」である企業に説明する能力は問えないか。
・一般教養重視、というメッセージがほしい。一般教養を欠いた国際人は存在しえないし、学生は、「どういう資格が有利か」等と右往左往し、自身の勉強のベクトルが定まらない。例えば、こういうディベートを行うのでこの50冊の中の8冊は読んでおいてほしい等、明確なブレイクダウンを。
・志望動機や自己PRを重視しないでほしい。面接攻略本が浸透する中で、このような単調でストレートな質問を行えば、面接する側と気の合う人材ばかり採用してしまう傾向にある。企業側にとっても人材の多様性を確保することが難しくなるのではないか。
これらを具体的に実現していくには、教育側と企業側の意思疎通が必要であるとして、その可能性・方法について解説・議論を行いましたが、こちらのレポートでは割愛させて頂きます。
次回の大学経営実務講座は11/5(木)に開催予定、テーマは「東工大での人材育成チャレンジ:外部リソースを活用した研究者のマネジメント能力向上プログラム」になります。講師は株式会社カドタ・アンド・カンパニー代表取締役で元東京工業大学大学院 総合理工学研究科(博士課程)特任教授の門多丈さんです。皆様のご参加を是非ともお待ちしております!
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