活動報告
2010年12月20日
第5回 勉強会 特別講演会レポート
2010年12月10日(金)15時00分より、JAビル カンファレンスセンターにおいて、第5回勉強会(特別講演会)が開催されました。
第1回勉強会から第4回までは、大学経営における財務面に焦点をあて、法的側面、資産運用の考え方、財務経営分析、寄付金に関するテーマで講演が行われましたが、 第5回となる今回は、特別講演会として、岐阜大学前学長である黒木登志夫先生を招聘し、「国立大学法人化とは何だったのか」というテーマで講演が行われました。
黒木先生は、2001年から2008年までの7年間、岐阜大学の学長を務められましたが、その間、国立大学法人化にも積極的に取り組まれ、その経験から、
- 国立大学法人化に至るまでの経緯およびそのメリット
- 国立大学の経営、組織の実態
- 国立大学法人化のメリットを活かした取り組み
- 今後の高等教育(大学)の将来像
などについて講演されました。
時折ユーモアも交え、終始和やかな雰囲気で講演が行われましたが、国立大学のおかれている厳しい実情についても指摘され、大変貴重な講演会となりました。
今回の特別講演会におきましても、首都圏はもとより各地の国公私立大学から多数の参加をいただき、出席者の多くの方々から様々な質問を受けるなど、好評の裡に終了することとなりました。
第5回勉強会(特別講演会)の内容は次のとおりです。
- 会長の挨拶
- 講演「国立大学法人化とは何だったのか」
<阪神高速道路(株)代表取締役会長兼社長 大橋 光博>
黒木登志夫 氏
岐阜大学前学長
東京大学名誉教授
日本学術振興会学術システム研究センター副所長
世界トップレベル研究拠点プログラム・ディレクター
- 国立大学法人化
- 国立大学法人化で何が変わったか
- 組織運営・意思決定プロセス・財政システム
- 国立大学法人化最大のメリット
- 教育改革から・財政改革へ(運営費交付金の削減)
- 高等教育への公財政支出と私費負担(OECD参加28国)
- 大学付属病院(危機、運営費交付金減額、収入増への積極的な取組み)
- 法人化により活性化?疲弊?
- 国立大学の役割、公立・私立大学の役割
- 大学改革は道半ば
- 社会的共通資本
3. 主な質疑応答 Q.大学への運営費交付金は大学毎にかなり偏りが大きいが、それを改善する方策は? A.変えるのはかなり難しいと思う。 すでにフィードバック・サイクルが確立しており、いい研究をしているところが有利で、 そうでないところは申請してもなかなか通らない。 ただ、そのサイクルに入っている人たちと共同で研究する方法などは、改善策のひとつになる。 Q.海外では私費負担が大きい国でも、奨学金制度が充実しているところがあると聞くが、 日本は、私費負担が多く、かつ奨学金が少ないように思われるが? A.ハーバード大学では学費が年間数万ドルかかるが、入学が決まるとすぐローンの誘いがあると聞く。 アメリカでは私的ローン制度が整っている。欧州ではフェローシップ制度がよく整備されている。 一方、日本は遅れている。特に大学院生向けは奨学金が少なく、また国立大学はまだよいが私立大学はもらえない場合もある。 大学側でも工夫する余地がある。
Q.教育の質について? A.語学におけるトーイック基準など、教育の質に力を入れている大学もある。 資格の合格率が公表される学部(医、獣医)なども教育の質にこだわっている。 ただ、教養教育をやめて久しいという現実もある。 文部科学省は、教育の質の向上をはかるべく「Good Practice」を推進しているが、 事業仕分けで、そもそも大学自ら取り組むべきものという意見もあり、厳しい状況にある。
Q.日本の大学では、外国の教員や学生が少ない。税金(日本人優先)の問題も背景にあるのかとは思うが、 優秀な先生を外国から招くことも重要なことではないか? A.世界の大学のインターナショナル度を測る指数によれば、スタッフ数でハーバード大学50%に対し、 東京大学はわずか2%であった。非常勤教員を含めた時間数でも、5%足らず。日本はかなり低いという現実がある。 政府は留学生10万人計画に続き、30万人計画を打ち出しているが、現在仕分け対象となっている。 海外からの教員の招聘は、大学法人化により、大学経営の工夫(大学に給料配分の裁量権がある)により、 以前より柔軟な対応ができるようになっている。
4. 終わりに
2011年はじめに予定しているNPO設立後も、引き続き勉強会を予定しておりますが、
今後とも、大学の財務に限らず様々なテーマで開催していきたいと考えております。
是非とも皆様のご参加をお待ちしております。
NPO設立に関する情報につきましては、本WEBサイト(http://www.daigakunoasu.org/)に掲載してまいりますが、
設立趣旨にご賛同いただける場合には、入会などご検討いただければ幸いです。
以上
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