活動報告

2010年06月11日

第2回 勉強会 レポート
「大学の明日を考える会」第2回勉強会を開催しました

2010年5月28日(金)15時より、JAビル カンファレンスセンターにおいて、大学財務責任者・担当者、学識経験者、有識者の方々の出席のもと、第2回勉強会を開催しました。

前回(第1回は「学校法人の資産運用と法制度」というテーマで、法務の観点から勉強会を開催しましたが、今回は「大学法人における資産運用と課題」というテーマで資産運用そのものにスポットライトをあてました。大学の資産運用の問題は、財務担当者のみならず経営層(トップ層)も含め関心の高いテーマですが、どこに問題があるのか、その解決策があるのかなど、議論は緒についたばかりです。この勉強会には、大学の関係者に加え、法曹、会計の世界からもその道のプロフェッショナルの方々が参加しており、活発な意見交換を交えることを目的として実施いたしました。

第2回勉強会の内容は次のとおりです。

  1. 会長の挨拶 <(株)MRI:大橋代表取締役>
  2. 講演「学校法人における資産運用と課題」<上智大学:引間特任教授>
  3. 事前に事務局宛に届いた質問に対する回答
  4. 懇談会

上智大学・引間特任教授の講演では、大学の資産運用の現状、体制、意思決定プロセス、課題、といった全体像の説明とともに、今後より深掘りしていくにあたり、その本質的な課題や様々な論点や問題提起もあり、今後につながる講演となりました。

主なポイントは以下のとおりです。

  • 学校法人の資産運用の目的
    大学毎におかれている状況が異なることから自ずと資産運用の目的も異なるため、何のために運用するのか、その果実(何のために使うのか)を明らかにしておくことが重要
  • 運用体制と資産運用ガバナンス
    意思決定権限と責任を明確化、理事会・資産運用委員会・資産運用責任者の権限と責任を明確化することが、ガバナンス機能の強化に資する
  • 投資方針・投資ガイドライン
    事例とそのポイントについて説明
  • 資産運用と簿価会計
    簿価会計、時価会計の双方に特性がある。一概にどちらがよいとも言えないが、その両方式のギャップを縮める方法として、ファンドを利用するのも一考の価値あり

事前に事務局宛に届いた質問に対する回答は次のとおりです。

質問:大学の規模や資産運用に対する考え方が異なるので一概には言えないが、その担い手として、a.育成する b. 経験者を雇用する c.外部に相談役を求める、などがあるが、どのような方法、組み合わせ、あるいは望ましくない方法があるか、およびその長所・短所は?
回答:答えは一つではない。個々の大学の状況によっても異なる。
ただ、投資する対象という観点から見れば、比較的債券などは内部人材でも対応可能である。株式等は内部で対応するのは困難と思われる。外部に依存することになろう。ただし、外部に委任する場合でもモニタリングをしっかり行って、業者まかせにならないように配慮しなければならない。
なお、内部人材の育成は、習熟するまで期間がかかるので、人事ローテーションにはなじまない。外部からの採用もありうるが、報酬制度との整合性がとれるかどうか。など、検討すべき点がある
質問:大学特有の資産運用はあるのか?大学の特性として、年度初めに多額の資金が入るが、適した運用方法は?大学は営利団体ではないので、比較的安定的な運用が求められるのか、あるいは最適資金運用といった観点から、ポートフォリオ運用が望ましいのか?
回答:まず、入ってくるお金を経常的な資産と運用資産にわけ、経常的な資産は短期的な運用を行うことになる。ただ、経常的な資産とはいえども、何もしないでそのままにしておくのではなく、期間構成等も考慮し、プラスアルファーをとりにいくという決め細やかな対応が求められる。
運用資産については、財務体力からしてどのくらいのリスクがとれるのか、理事会でしっかり議論し、決定しておくことが重要である。議論をする際の資料としては、標準偏差(リスク指標)はわかりにくいので、例えば、ヒストリカルなチャートを使用するのもいいのではないか

次いで、懇談会では事務局より、「現在大学の資産運用で起きている問題(オプションを組み込んだ仕組債での損失等)は、20数年前の生命保険会社で起きていた。その後、年金の資産運用でも同様のことが起きたが、今では米国の年金レベルまで向上した。もう、こういうことは起きないだろうと思っていたところ、リーマンショックを契機に大学の資産運用で顕在化したことに驚きをかくせない。」
「このような大学で顕在化している財務面での問題に対し、当会は、ビジネス機会を求めるのではなく、資産運用の本来的な機能や考え方について、これまでの経験を踏まえて社会に伝えていきたいという使命感のもと立ち上げた。」また、「今後、会を永続的なものとするため、NPO化、WEBのアップなど準備を進めており、今後も、大学の財務(決算書)分析や、米国大学財団の運用事例研究、企業年金の運用事例研究など、定期的に勉強会の開催を予定しているので、積極的な参加を期待し、ご参加の方々との理解を深めていきたい。」とコメントしました。

最後に、勉強会にご参加頂きました皆様からのご意見をご紹介させて頂きます。

  • 大学の資産運用を担当してまだそう長くないが、リーマンショック以前は環境もよく、それなりに大学の収益に貢献した。しかし、リーマンショック後は、一転して厳しい状況におかれている。
  • 評価(評価損の計上)に関して、監査法人の指摘が厳しくなってきている。
  • 資産運用の失敗により、資産の過半以上を毀損したある大学では、ガバナンス機能がほとんどなかった。そのレベルの大学は多いのではないか。
  • 5年ほど前から資産運用のガバナンス体制の構築に取り組み、一定レベルの整備が行われた。
  • 示唆に富む勉強会で大変参考になった。次回以降も参加したい。
  • 資産運用の果実を何に使うのか、これを決定しておくことは大変重要なことと思う。
  • 前任者の時代に購入した超長期の仕組債は流動性がほとんどなく、どう処分するか悩ましい問題である。

大学の明日を考える会では、「決算書の分析」や「米国大学財団の資産運用」など今後とも様々なテーマで、大学財務に関する諸問題を関係者の皆様と共に議論する勉強会を開催予定です。是非とも皆様のご参加をお待ちしております。


以上
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